親の賃貸物件を、どこに管理してもらっているかは知っていました。ただ、誰がどの仕事をしているのか、私は具体的には分かっていませんでした。
それまで細かな管理に関わっていなかったので、何かに困って相談したわけではありません。担当者と顔を合わせ、今の管理の実態を知っておきたい。今後の新築物件の管理について打ち合わせるときにも、比較する材料にしたい。そう考えて面談をお願いしました。
契約書などがあればコピーをいただきたいと先に伝え、面談で受け取りました。その経緯と資料の整理方法は、「親の賃貸経営を引き継ぐ準備|資料の所在と確認先を整理する」にまとめています。
今回は、その先の話です。管理会社へ任せる仕事、別にかかる費用、所有者が判断する場面、緊急時の連絡。当時聞いた説明と、今回の資料の読み直しを分けながら、私なら何を確かめるかを整理します。
管理の窓口と、実際に動く人を分けて見る
面談では、入居者の募集、家賃の集金・管理、建物の管理について、それぞれの役割を聞きました。募集に関わる会社と、建物の不具合に対応する会社があり、すべてを同じ人が動かしているわけではありませんでした。
修理についても、入居者から連絡を受け、現場を確認する役割と、費用を精算する役割を分けて説明されました。今なら、会社名を覚えるだけでなく、「入居者からの連絡は誰が受け、所有者には誰が知らせるのか」まで聞いておきたいところです。
今回読み直したのは、既存物件について受け取った契約書と、別の時点の管理費内訳書です。新築計画についても管理方法の説明を受けた記録はありますが、既存物件の契約、新築案の提案、実際に行われた管理は分けて考えます。古い書面だけで現在の契約条件がすべて分かるわけでもありません。
管理方法を比べるなら、契約の仕組みも先に確認したいと思います。ここでいう一般管理は、所有者が入居者に貸す物件の管理業務を委託する形です。一方、サブリース方式では、会社が所有者から物件を借り、その物件を入居者へ貸します。この仕組みは、国土交通省のサブリースの解説でも確認できます。
「管理を任せる」という言葉が同じでも、契約相手の立場は違います。まず自分がどの契約を確認しているのかをそろえてから、仕事と費用の中身を見ていきたいところです。
管理料に含む仕事と、別にかかる費用を確かめる
受け取った書類を今回読み直すと、通常の管理報酬とは別に、修理などの費用を所有者が負担する記載がありました。管理費の内訳書にも、清掃や点検の項目・回数と、別途見積もりとなる仕事が分けて書かれていました。
これは、その書面に記載された範囲の話です。現在の料金や、実際にその回数の作業が行われたかまで、この書面だけで確認できたわけではありません。
私なら、管理料の額を見る前に、「何の仕事への報酬か」と「作業や修理そのものにかかる費用か」を分けます。修理の窓口を引き受けてもらえることと、工事代まで管理料に含まれることは、別に確かめたいからです。
例えば、次のように聞きます。
- この管理料には、どの仕事が含まれていますか。
- 別料金になるのはどんな場面で、いつ、誰に支払いますか。
- 見積もりや請求書で、作業費と手配・管理に関する費用を分けて確認できますか。
国土交通省の「管理受託契約重要事項説明書」の記載例も、管理業務、報酬、報酬以外の費用を分けて確認する参考になります。これは確認用の書式例であり、自分の契約内容は手元の契約書や別紙で確かめる必要があります。
修繕は、見積もり・承認・発注を分けて聞く
既存物件の面談では、不具合の状況や見積もりを所有者へ伝え、了承を得て工事を進める流れが説明されていました。これは面談で聞いた業務の説明です。個々の工事がそのとおりに進んだかを、ここで検証したものではありません。
今回契約書を読み直すと、退去後の修理を扱う条項には、所有者が負担する修理について、一定の金額以下の場合や緊急の場合、事前の承諾を要せず事後報告で扱う記載もありました。この条件を当時の私が把握していたという話ではなく、今回の読み直しで確認した内容です。
だから、通常の流れを聞いて終わらず、「どこから所有者の判断が必要で、どんな例外があるか」も一緒に確認しておきたいと思います。
修理の相談なら、見積もりを取る人、内容を説明する人、承認を受ける人、工事を発注する人を順に聞きます。管理会社が手配する場合も、追加工事が出たら再度相談するのか、ほかの見積もりを取れるのか、その場合にどの窓口へ伝えるのかを残しておきたいところです。
ここで「いくら以下なら任せてよい」と共通の金額は決められません。契約の記載と実際の運用を確認し、曖昧な部分があれば担当者に説明を求める、という順序で考えています。
緊急時は、連絡がつかない場合まで確かめる
通常は相談してから動くとしても、急いで対応する必要があるときはどうなるのか。ここは、私なら別に聞きます。
国土交通省の「賃貸住宅標準管理受託契約書」第11条には、承認を得る時間的な余裕がない緊急対応と、その後の業務内容・費用の報告を定めた例があります。標準書式の内容が、そのまますべての契約に当てはまるわけではありません。
自分の契約について聞くなら、次の三つです。
- 通常時と夜間・休日で、入居者と所有者の連絡先は変わるか。
- 所有者に連絡がつかないとき、誰が、どの範囲の応急対応や発注を判断するか。
- 対応した内容と費用は、いつ、誰から、どんな方法で報告されるか。
電話を受け付けること、現場へ行くこと、修理を終えることも分けて聞きたいと思います。受付の案内だけで、到着までの時間や、その場でできる作業まで分かったつもりにならないためです。応急対応の後に本修理が必要なら、改めて承認を求めるのかも確認に残します。
契約を開いて書き込む、管理の分担表
ここまでの確認を、仕事の場面ごとに並べたのが次の表です。私の契約内容を転記した完成表ではなく、読者が自分の契約を確認するための質問例です。
各欄の問いに、契約書や別紙、担当者の回答を書き足して使います。分からないところは「未確認」、回答を聞いたところは確認日と根拠を残します。全部を埋めることより、次にどの場面を誰に聞くかが分かることを目指しています。
| 業務・場面 | 管理会社へ任せる範囲 | 所有者の確認・承認 | 費用・発生条件 | 確認資料・連絡先 |
|---|---|---|---|---|
| 募集・条件変更 | 募集、申込みの確認、契約手続きは誰が担当するか。 | 家賃・募集条件の変更や入居の判断は、いつ相談を受けるか。 | 募集に伴う費用は何に対して、どの時点で発生するか。 | 募集の委託内容・条件表を、募集担当と契約窓口に確認する。 |
| 入居・退去 | 入居時の案内、退去立会い、精算はそれぞれ誰が行うか。 | 修理の範囲や、入居者・所有者の負担の説明を誰から受けるか。 | 立会い・精算の業務費用と、清掃・修理費はどう分かれるか。 | 委託契約・賃貸借契約・精算書を、退去対応と精算の担当に確認する。 |
| 家賃管理・報告 | 入金確認、未入金への対応、送金、明細作成はどこまで含むか。 | 未入金や送金額の変化をいつ把握し、誰に説明を求めるか。 | 手数料の計算対象と、送金前に差し引く費用は何か。 | 集金・管理の契約、送金明細、入金記録を、集金担当に確認する。 |
| 日常管理 | 清掃・巡回・点検の範囲、回数、実施する会社はどこか。 | 作業の報告や不具合の連絡を、どの方法で受けるか。 | 定額に含む作業と、追加料金になる作業の境目はどこか。 | 業務一覧・管理費内訳・作業報告を、建物管理の窓口に確認する。 |
| 修繕の見積もり・発注 | 調査、見積もり取得、業者手配、完了確認は誰が行うか。 | 事前承認の条件、追加工事の再承認、相見積もりの扱いはどうか。 | 調査・手配・工事の費用と、支払時期はどう分かれるか。 | 修繕の条項・見積書・承認記録・完了報告を、修繕窓口に確認する。 |
| 緊急対応 | 受付・現場対応・応急処置を誰が担い、どこまで対応するか。 | 連絡不能時の判断者・対応範囲と、事後報告の方法は決まっているか。 | 出動・時間外・応急処置・本修理の費用はどう扱うか。 | 緊急時の条項・連絡方法を、管理窓口に確認する。 |
| 別料金・対象外の仕事 | 別途依頼が必要な仕事、契約に含まれない仕事は何か。 | 追加依頼の前に、内容と費用を確認・承認できるか。 | 料金表の有無、見積もりの条件、請求元と支払時期はどうか。 | 別紙・料金表・個別見積もりを、契約窓口に確認する。 |
| 契約変更・終了時の引継ぎ | 変更手続き、入居者への案内、書類・預り物の引継ぎは誰が行うか。 | 申出期限、未対応の修理、未入金や精算中の事項をどう確認するか。 | 変更・終了に伴う費用や、未精算の費用は何か。 | 変更・終了の条項と引継ぎ一覧を、現在と引継ぎ先の窓口に確認する。 |
「含む」「別料金」「対象外」は、説明を受けた根拠と一緒に残したい区分です。空欄だから無料、表にあるからどの会社も担当する、と補うことはしません。
募集の行では、家賃や条件の変更を誰が決めるかを確かめます。提案された家賃そのものの根拠を調べる段階では、「提案された家賃は何を根拠にしているか|募集と成約を分けて見る」に確認項目をまとめています。
次の打合せには、分からない一場面を持っていく
仕事を任せた後の報告も、私なら表と一緒に確かめます。家賃の入金・送金を確認する明細と、清掃・点検・修理が行われたことを確認する報告では、知りたい内容が違うからです。
契約が変わるときや終わるときも、書類を渡せば終わりとは考えず、未対応の修理や精算中のお金について、誰から説明を受けるかを聞いておきたいと思います。
最初の面談で私が知りたかったのは、誰が何をしているかでした。今ならそこからもう一歩進めて、例えば「修理の連絡が来たとき、私が判断するのはどの段階ですか」と、一つの場面に絞って聞きます。これは、これから確認するときの質問です。
任せる範囲が分かると、次は自分が返事をする場面や、そのために受け取りたい情報が見えてきます。すべてを自分で抱え込むためではなく、任せる仕事と、自分に残る判断を分かる形にしておく。親の賃貸経営を引き継ぐうえで、私はそこを確かめていきたいと思っています。
