親の土地を駐車場にするか、アパートを建てるか。収入の見込みを並べれば比べられそうですが、その数字が何を含んでいるかで、見え方は変わります。
私は、親の土地に関わる賃貸住宅の建築計画を検討してきました。関連する資料には、既存の駐車場の契約書もあります。今回、それぞれの資料を確認する中で、まず分けておきたいのが「契約に書かれた金額」「実際の入金」「これからの計画」でした。
ただし、二つの資料の対象土地や利用範囲が一致するかは、今回の確認では分かっていません。この記事では、その資料から分かる範囲を手掛かりに、駐車場とアパートを比べる前に、何をそろえ、誰に聞けばよいかを整理します。
駐車場の契約金と、建築計画の収入は意味が違う
今回確認した駐車場の書類は、区画を指定した使用契約書と、契約時の計算書でした。計算書には、複数月分の駐車料と敷金がまとめて載っています。その合計を一か月の収入や、駐車場全体の利益として使うことはできません。
また、書類に送金額や送金日が書かれていても、それだけで口座への入金まで照合できたことにはなりません。契約どおりに受け取ったかを知るには、送金明細と入金記録を突き合わせる必要があります。
一方、賃貸住宅の建築計画書には、住宅の家賃だけでなく、共益費や計画内の駐車場収入を加えた収入予定額がありました。こちらは将来の計画です。実際にその家賃で契約が決まり、入金された実績ではありません。
これらは、当時の私が二案を比較して確認し終えた話ではなく、今回の資料確認で整理した内容です。私なら今、金額の横にまず「何のお金か」「何か月分か」「実績か計画か」を書き添えます。それだけでも、同じ欄に置いてよい数字かどうかが見えてきます。
同じ土地・同じ期間・同じ貸し方で比べる
数字の意味が分かっても、比較する土地の範囲が違えば、そのまま優劣は付けられません。駐車場は一部の区画、アパートは敷地全体という資料なら、まず範囲をそろえるところからです。別の土地の事例を参考にするときも、立地や広さなど、どこが違うかを残しておきたいと思います。
期間も同じです。開業して一年を通して収入がある状態と、工事や募集で収入のない月を含む初年度では、残るお金が変わります。月額を十二倍した金額は、毎月同じ条件で収入があると置いた計算であって、一年間の入金実績ではありません。
駐車場については、所有者が利用者に区画を貸す案なのか、土地を運営会社へ貸す案なのかも確認したいところです。アパートも、入居者から家賃を受け取る契約と、一括借上げの提案では、確認する相手や条件が変わります。誰から何の対価を受け取り、どこまで自分が負担するのかを、契約案で確かめます。
今回の資料だけでは、同一敷地全体について、この前提をそろえた収支比較まではできていません。別々の資料から、都合のよい数字だけを拾わないことを出発点にします。
需要と収支は、それぞれの根拠を聞く
駐車場の需要を聞くなら、近隣の募集料金に加えて、どの範囲を、いつ調べたのか。契約中の区画や空いている区画、問い合わせの状況は、どの資料で確かめられるのか。既存の契約書が一つあるだけでは、駐車場全体の利用状況までは分かりません。
アパート案も、近くの募集家賃がそのまま自分の計画の根拠になるとは限りません。立地、間取り、面積、築年、設備などの条件と、募集時の金額なのか、実際に契約が決まった金額なのかを聞きたいと思います。今回参照した計画書の収入予定額だけでは、この需要の裏付けまでは確認できませんでした。
収入の根拠がそろったら、次は費用です。私なら、次の順に紙を分けます。
- 始めるまでのお金:整備・建築などの費用と支払日。すでに利用中なら、切り替える間の収入をどう見込むか。
- 続ける間のお金:収入と、管理・清掃・点検・修繕・保険・税など、その案で所有者が負担する支出。
- 借入に関するお金:借入額、実行予定日、返済開始日、元本と利息の支払い。提案段階か、条件が確定しているか。
同じ費用を初期費用と毎年の費用に重ねて入れていないか、敷金など返還を要するお金を自由に使える収入に混ぜていないかも確認します。税務上の所得と、手元のお金の増減も別です。例えば、借入返済の元本部分は支出になりますが、必要経費にはなりません。建物などの減価償却費は、取得費を使用期間に配分する税務上の費用で、その年の支払額とは一致しないことがあります。国税庁の「借入金利子」と「減価償却のあらまし」でも、この区別を確認できます。
支払日までに用意する資金を先に整理したい場合は、土地はあるが資金に余裕がないとき|初期費用と負担を確認するにまとめています。ここでは、その整理を駐車場とアパートの両方に当てはめていきます。
駐車場とアパートを比べるための記入表
下の表は、読者が自分の土地について記入するための、一般的な確認例です。私の契約内容や収支実績を埋めたものではありません。
「確認済み」とする欄には、分かった内容と資料名・日付を添えます。根拠が手元になければ「未確認」、資料を受け取っていなければ「未取得」のままにします。全部を埋めることより、次に何を誰に聞くかが決まることを、この表の目的にしたいと思います。
| 比較項目 | 駐車場:確認済み・未確認 | アパート案:確認済み・未確認 | 比較条件・不足資料 | 確認先・次の質問 |
|---|---|---|---|---|
| 対象土地・比較期間 | 状態・内容:__ 貸す範囲、貸し方、実績の対象期間。 | 状態・内容:__ 建築・利用する範囲、運営方法、計画の作成日。 | 同じ土地全体か。初年度と通年稼働後を分ける。配置図・対象範囲図:__ | 管理会社・提案会社へ「この二案は、どこまでの土地を何年間で比べていますか」 |
| 需要・募集条件 | 状態・内容:__ 近隣条件、募集と契約の区別、利用・空き状況。 | 状態・内容:__ 近隣条件、募集と成約の区別、空室の想定。 | 調査地域・時点・比較物件の条件。需要資料・査定根拠:__ | 募集・管理担当へ「何を、いつ調べた数字ですか。実績で確認できる範囲はどこですか」 |
| 初期費用・支払時期 | 状態・内容:__ 整備・舗装・設備等の範囲と支払日。 | 状態・内容:__ 解体・設計・建築・付帯費用等の範囲と支払日。 | 必要な工事、税込・税別、別途・予算枠。見積書・支払予定表:__ | 工事・提案担当へ「含まれない費用と、支払日までに確定しない費用は何ですか」 |
| 収入開始時期 | 状態・内容:__ 募集・利用開始、賃料発生と初回入金の時期。 | 状態・内容:__ 工事・募集・入居開始、賃料発生と初回入金の時期。 | 開始の遅れや無収入期間。契約案・工程表・募集予定:__ | 管理会社・提案会社へ「使い始める日と、お金が入る日はいつですか。遅れた場合はどうなりますか」 |
| 収入 | 状態・内容:__ 契約賃料、実際の入金、対象月。敷金等は別記。 | 状態・内容:__ 想定家賃・共益費・駐車場収入の内訳と稼働条件。 | 月額・年額、実績・計画を区別。契約書・送金明細・入金記録・収入予定表:__ | 管理・計画担当へ「この合計には、何のお金が何か月分含まれていますか」 |
| 運営費 | 状態・内容:__ 管理・清掃・設備保守・修繕等の負担者と実績。 | 状態・内容:__ 管理・点検・共用部費用・修繕等の見込みと根拠。 | 同じ期間で、費用控除前後を分ける。請求書・年間明細・管理見積:__ | 管理担当へ「所有者の別負担は何ですか。実績と概算を分けられますか」 |
| 借入負担 | 状態・内容:__ 借入の有無、条件、返済額と開始時期。 | 状態・内容:__ 借入の予定・確定、条件、返済額と開始時期。 | 元本・利息、金利の前提、融資実行日。融資条件書・返済予定表:__ | 金融機関へ「どの条件が確定していますか。収入が遅れても返済はいつから始まりますか」 |
| 管理責任 | 状態・内容:__ 募集、集金、清掃、事故・苦情時の窓口と費用負担。 | 状態・内容:__ 募集、集金、修理、入居者対応の窓口と費用負担。 | 誰が受け付け、判断し、支払うか。契約案・業務範囲・保険内容:__ | 管理・契約担当へ「委託の範囲外は何ですか。所有者の判断と費用負担が必要になるのはどんな時ですか」 |
| 税の確認 | 状態・内容:__ 土地・設備等にかかる税と、相続税評価の確認状況。 | 状態・内容:__ 土地・建物等にかかる税と、相続税評価の確認状況。 | 毎年の税負担と相続税評価を分ける。課税明細・利用計画・個別試算:__ | 自治体・税理士へ「この土地と利用方法では、何が変わり、何の確認が必要ですか」 |
| 将来変更・終了費用 | 状態・内容:__ 終了の条件、予告期間、設備撤去・原状回復の負担。 | 状態・内容:__ 賃貸借終了の条件、将来の修繕・解体、借入残高。 | 契約期間だけで自由に終了できるとしない。契約条項・撤去見積・借入条件:__ | 契約担当・必要に応じ専門家へ「用途を変えたい時、どの条件・期間・費用が関わりますか」 |
税と、将来やめる時の条件は別に確かめる
二案の税を比べるときは、毎年の固定資産税などと、相続税を計算するための評価を分けます。「税が安くなる」という説明を受けたら、まず何の税の話かを聞きたいと思います。
毎年の税では、土地だけでなく、建物や事業用の設備も確認対象です。例えば横浜市は、住宅を取り壊して駐車場にした場合、住宅用地の特例が外れて土地の税負担が増えることと、建物の税がなくなることを分けて案内しています。住宅用地の特例は、住宅の敷地について税の計算の基礎となる額を軽減する仕組みです。舗装などが償却資産の課税対象になる場合もあるため、土地・建物・設備を含めた全体を、土地のある自治体に確認します。これは制度の一般例で、私の土地への適用を確定した説明ではありません。(横浜市「住宅を取り壊して駐車場にした場合の固定資産税は…」)
相続税評価にも、利用状況による違いがあります。国税庁は、所有者が自ら月極めなどの貸駐車場として利用する土地について、原則として自用地としての価額で評価すると説明しています。一方、貸している建物の敷地には、賃貸状況などを反映する「貸家建付地」の評価があります。契約や利用の実態を税理士に示して確認する部分です。建築の提案があるだけで、将来の評価や税額が決まるわけではありません。(国税庁「貸駐車場として利用している土地の評価」・「貸家建付地の評価」)
もう一つ、始める時と同じくらい確認しておきたいのが、将来の使い方を変える時です。「いつまで貸すか」だけでなく、契約を終える条件、必要な期間、設備の撤去や建物への対応、借入が残る場合の扱いを聞きます。駐車場ならいつでも負担なく変更できる、とは置かずに比較したいと思います。
次の打合せでは、空いている欄から聞く
表に未確認の欄が残っても、その段階で駐車場かアパートかを決める必要はありません。需要の資料がないのか、見積りが不足しているのか、契約の負担範囲が分からないのか。空欄の理由が分かれば、次の相談は具体的になります。
私なら、まず次の三つを確認します。
- 「二案を同じ土地・同じ期間で比べるには、どの資料が足りませんか」
- 「この数字は実績ですか、見込みですか。見込みなら、何を根拠にしていますか」
- 「収入が予定より少ない時や、将来やめる時にも残る負担は何ですか」
費用や返済を差し引いた後のお金も、すべて自由に使えるとは限りません。その先の整理は、『手元剰余金』は自由に使えるお金?賃貸経営で残るお金を6つに分けて考えるで扱っています。
今の利用を続けながら確認する、判断をいったん見送る。そうした余地も残しておきたいと思います。収入の大きさだけで答えを出す前に、どこまで確かめられていて、何がまだ分からないのか。その違いが見える表を、次の打合せに持っていくところからです。
