建物を建てるお金は分かった。では、賃貸経営を始めるまでに必要なお金は、全部でいくらなのか。
親の土地で建て替えを考えるとき、この二つは分けておきたい問いです。私が以前受け取った計画書にも、建物の工事費とは別に、登記、保険、借入に伴う費用などが並んでいました。
しかも、金額が入っている欄だけではありません。工事費に含むと書かれた欄、概算の欄、金額が空欄の項目もありました。今その内容を振り返ると、「建築費はいくらか」の次には、「この合計に何が入っているか」を聞いておきたいと思います。
この記事では、当時の一社の計画書をもとに、建築費以外のお金も含めた総額を見ていきます。扱うのは過去の計画で、現在の契約額や支払実績ではありません。最後には、見積を前に、そのまま聞ける三つの質問をまとめました。
建築費と、事業全体のお金は同じではなかった
私の計画書では、工事費と消費税に、他の初期費用を加えて、必要なお金の合計が示されていました。この記事では、このように事業を始めるためのお金を全体で見るときに「総事業費」という言葉を使います。
ただし、書類によって費用のまとめ方は違います。「建築費」「工事費」「諸費用」という見出しだけで、含まれる範囲が同じとは考えない方がよさそうです。
例えば、私の資料では、外構や杭工事の金額欄は空いていましたが、工事費に含むという注記がありました。一方、広告宣伝費などには、金額が書かれていない欄もありました。
同じ空欄でも、「別の金額に含まれる」のか、「これから確かめる」のかで意味が違います。合計を出す前に、この違いを拾っておく。ここが出発点です。
工事以外のお金は、こんなところにもあった
計画書に並んでいた項目のうち、建物の価格とは分けて見ておきたいものを三つ挙げます。いずれも当時の資料にあった項目で、現在の契約額や支払実績を紹介するものではありません。
建物が完成する前の利息
資料には、工事期間中から返済開始までの借入金利を見込む欄があり、概算とされていました。建物を完成させるためのお金とは別に、完成まで資金を借りておくためのお金も計画に入っていたわけです。
今の私なら、金利の数字だけでなく、「いくらを、どの期間借りる前提ですか」と聞きます。金利が同じでも、借りる金額や期間が違えば、利息の見込みも変わるからです。
登記に関係する税金と手数料
登記は、土地や建物の状況や権利を公の記録に載せる手続です。法務省の説明も参考になります。私の資料には、登記に関係する税金と、手続を担う専門家への手数料が分けて記載されていました。手数料には、概算という説明もありました。
「登記費用は入っていますか」だけで終わらせず、税金と手数料の両方を指しているのかを確かめたいところです。具体的な税額や適用される扱いは、個別の条件をもとに専門家へ確認します。
水道に関係するお金も、一つではなかった
水道関係では、負担金と、給排水を引き込む工事費が別の項目になっていました。同じ「水道のお金」でも、計画書では分けて扱われています。
だからこそ、「設備工事に入っています」と説明されたら、どちらまで含むのかを聞きたいと思います。名前が似ている費用ほど、ひとまとめにしない方が確認しやすくなります。
「手配してくれる人」と「払う人」を分けて聞く
もう一つ、金額と一緒に残しておきたいのが、誰が手配し、誰が費用を負担するかです。
例えば、手続を建設会社が取りまとめるとしても、その説明だけで、関連費用がすべて工事代金に含まれると決めることはできません。これは私の契約の結論ではなく、見積を読むときに分けておきたい点です。
「どなたにお願いするのか」と「その費用は、どの見積に入っているのか」。この二つを聞けば、手配の話とお金の話が混ざりにくくなります。見積や請求が複数に分かれる場合も、誰の負担かを確認したうえで、一つの資金計画に戻して見たいと思います。
見積の横に置いて使う、総額の確認表
下の表は、手元の見積を見ながら質問を選ぶためのものです。過去の計画書にあった費用項目を中心に、予備費についての確認も加えています。私がすべて確認し終えた一覧ではなく、これから何を確かめるかの例です。必要な費用や負担者は、各案件の契約・条件で確かめます。
| どんな費用? | 総額で見落としたくないこと | 誰が払い、何がまだ未確定? | 誰に聞く? |
|---|---|---|---|
| 工事・設計・付帯工事 | 本体以外の工事や消費税が、どの金額に含まれるか | 施主が別に手配する工事はあるか。対象範囲と金額は確定しているか | 建設会社・設計担当 |
| 負担金・給排水の引込 | 負担金と工事費を、一つの費用と思い込んでいないか | 誰が納付・支払いをするか。工事代金とは別の費用か | 建設会社・対象の行政窓口や事業者 |
| 登記・関連税金・手数料 | 税金と専門家の手数料を、両方確認しているか | 誰の負担か。概算か、個別の条件で金額を確認済みか | 司法書士・土地家屋調査士・税理士等 |
| 借入に伴う利息・保証料等 | 工事期間中の費用が、計画に入っているか | 借りる金額・期間の前提は何か。必要な費用と負担者は確定しているか | 金融機関・保証機関 |
| 保険料 | 計上した保険料が、どの期間・補償範囲のものか | 誰が契約し、誰が負担するか。見積条件と開始時期は何か | 保険会社・代理店 |
| 解体・明渡しなどの準備 | 工事本体とは別に見込む費用を、合計に入れているか | 見込んだ範囲と費用負担はどこまでか。予算と確定額を分けているか | 工事担当・管理窓口など、項目に応じた相手 |
| 入居者募集・広告 | 空欄を「かからない」と読んでいないか | 費用が発生する条件と負担者は誰か。今回の合計に入っているか | 管理会社・募集窓口 |
| 予備費・まだ決まっていない費用 | 何に備えるお金か。すでに含めた予算と重複しないか | どの未確定項目を見込むか。金額が決まったら、どの欄を見直すか | 建設会社等と確認し、資金計画を作る側で整理 |
全部を一度に聞く必要はありません。まずは、合計に含まれるか分からない項目を一つ選び、その行の質問を使うところからで十分です。
予備費を足す前に、すでに入っている予算を見る
未確定のお金に備えることは大事ですが、何でも合計に上乗せすればよいわけではありません。
例えば、解体関係の予算がすでに総額に入っているのに、同じ作業の見積を丸ごと足すと、二重に数えてしまいます。今の私なら、金額が具体的になったとき、それは「すでに入れた予算の見直し」なのか、「予算に含まれていなかった項目の追加」なのかを聞きます。
また、「その他」という欄があっても、その金額がすべての未確定費用をまかなう予備費とは限りません。私の資料にも、印紙代や調整を含む概算の欄がありました。何に使うお金かを確かめず、余裕資金と読み替えないようにしたいと思います。
解体費で予算と確定額をどう分けたかは、「解体・地中物の費用|予算に入れることと金額が確定することの違い」にまとめています。ここでは、その個別費用を全体の合計へどう戻すかを考えています。
「総額」と「借りられる額」も、分けておきたい
必要なお金を並べたら、次はそのうち何を借入でまかない、何を手元の資金で用意するかです。費用として発生することと、融資の対象になることは、同じとは限りません。
例えば、住宅金融支援機構の「子育て世帯向け省エネ賃貸住宅建設融資」の案内では、工事費以外の諸経費にも触れる一方、入居者募集・広告費用などを融資対象外として区別しています。これは同商品の条件例で、私の契約や、すべての金融機関に共通する扱いを示すものではありません。
住宅金融支援機構「ご利用条件」―融資額・融資対象事業費の項目(確認日:2026年9月14日)
また、借入額は費用を払うための資金です。工事費などを合計したあとに、借入額そのものをもう一度足すと、必要なお金を重複して数えることになります。「いくらかかるか」と「どう用意するか」は、別の欄にすると分かりやすくなります。
次の打合せでは、この三つから聞いてみる
見積を前にすると、細かい項目が多くて、どこから聞けばよいか迷うこともあると思います。今の私なら、まず次の三つを質問のメモにします。
① この合計で、どこまでの費用を見ていますか。
工事以外の費用や、別の相手へ支払う費用も含まれているかを確かめます。
② この中で、金額や負担者がまだ決まっていない項目はどれですか。
空欄をゼロにせず、誰に聞けば分かるかを残します。
③ 別に届いた見積は、すでに入っている予算の見直しですか。それとも新しい項目ですか。
費用の抜けだけでなく、二重計上も避けるための質問です。
そのうえで、複数の提案を比べるなら、「土地活用の提案書、どう比べる?私が今確かめたい14項目」で、数字の前提や範囲をそろえていきます。
建築費の大きな数字を見たあとこそ、別の欄に並ぶお金にも目を向けたい。金額を全部覚えるより、「この総額に入っていない、こちらの負担はありますか」と聞けること。その方が、今の私には大切だと感じています。
総額が整理できたら、次に気になるのは「そのお金を、いつ用意するのか」です。合計が合うことと、支払日に間に合うことも、分けて考えておきたいと思います。
