初めて建設会社の事業計画書を見たとき、年間の利益が意外と少ないと感じました。ただ、どの欄を見てそう感じたのかは、今は特定できません。あくまで、そのときの私の印象です。
検討を始めた頃のことで、その場では税理士事務所から相続税の説明も受けています。今なら、金利はどうなっているのか、どこまでの費用が入っているのかと、気になることがあります。
当時は、そうした確認まで考えが及びませんでした。「何が分からないのかが分からなかった」。振り返ると、この言葉が一番近いと思います。
金利も意識しておらず、初回は質問をせず、録音もしていません。説明を聞いても、数字の意味や計算の前提を自分で確かめるところまでは進めていなかったのです。
提案書が集まっても、どう比べればよいか分からない
複数の建設会社から提案を受けるようになると、今度は、それぞれをどう比べればよいのかが分からなくなりました。
建築費はいくらか。どれくらいの利益を見込んでいるのか。その数字は、どんな条件で計算されているのか。金利や修繕費、設備、入居者募集など、確認したいことが増え、各社の違いを整理しきれなくなっていました。
そこで、金融機関の担当者に、各社の提案を一目で見比べられる一覧を作りたいと伝え、どの項目を取り出せばよいか相談しました。
担当者からは、各社の総事業費と家賃見込みについて説明がありました。さらに、計画に入れている自己資金の額や、間取りの構成にも違いがあるとの回答を受けました。
このやり取りは、各社の条件を完全にそろえて比較し終えた記録ではありません。何を並べれば比較できるのか、その整理の仕方を相談していた段階の記録です。
ここでいう自己資金は、借入金とは別に、自分で用意するお金のことです。今なら、総額に加えて、自分でいくらを用意する計画なのかも確かめます。
今振り返ると、条件の違いが気になる
金額の前提は、自己資金だけではありません。今の私には、各社がそれぞれの得意分野を生かして提案していたと感じられます。戸数が同じかどうかに目を向けても、それだけでは部屋の広さや間取りの割合、建物の造り方まで同じかは分かりません。
当初は、そうした違いを整理しないまま、建築費や利益の数字を見比べようとしていたのだと、今は思います。
ただ、検討の経過には、条件を伝える行動もありました。
初期は共通条件を決めずに提案を受け取っていました。その後は対象範囲や希望条件を伝え、同条件での提案依頼を進めるためのやり取りもしました。ただし、それだけで各社の提案を完全に同じ条件で比較できたわけではありません。
希望を伝えることと、届いた提案のどこに反映されているかを確かめること。その両方が必要だったと、今は考えています。
各社ならではの提案も、判断材料として残したいものです。共通の条件と、会社ごとの提案を分けて読む。そのうえで数字を見るなら、数字そのものの意味も確かめたいと思います。
計画書を読み直すと、同じ「利回り」でも式が違った
ここからは、記事を書くにあたり、過去の一社・一つの版の計画書を読み直して確かめた内容です。最初の説明を受けたときとは別の計画書です。当時の私が式の違いに気づいていた、という話ではありません。
今回読み直した計画書には、「表面」と「実質」という二つの利回りが載っていました。どちらも、収入が費用に対してどれくらいの割合になるかを示す数字ですが、計算に使う費用の範囲が違っていました。
割り算の式で、割られる側を「分子」、割る側を「分母」といいます。この書類では、収入額を分子に、費用の合計額を分母に置いています。
今回確認した書類では、「表面」と「実質」の分子は、どちらも同じ収入額でした。注記に挙がる収入項目も同じで、共益費や駐車場収入を含みます。
計算内容を要約すると、この書類の「表面」は工事費と消費税を分母にし、「実質」はそこに他の初期費用も加えていました。
どちらの利回りの式にも、分子から必要経費を差し引く記載はありません。一方、この計画書の別の収支欄では、必要経費と借入金の返済などを差し引いています。
ここを読み直して、私は収入と費用を別々に確かめたいと思いました。収入の側は、何を足し、何を差し引いているのか。費用の側は、どこまでを含めた合計なのか。利回りの名前だけでは、そこまで読み取れません。
この書類の「実質」という言葉だけで、経費を引いた後に手元へ残るお金の割合だと考えず、式まで戻って確かめたいところです。利回りの式と、計画書全体の収支は分けて読む。「利益」の欄についても、経費や借入金の返済がどこに反映されているのかを聞いておきたいと思います。
私が今、提案書を前に確かめたい14項目
ここまでの経験と今回の確認をもとに、提案書を読みながら確かめたいことを表にしました。気になる数字があれば、どのページのどの欄にあるかと、分からない点を一緒に書き出すための表です。質問文は、これから確認するための例として載せています。
「見当たらない」「説明を聞いていない」は、確認が必要な状態として残します。「費用はかからない」「含まれている」とは補いません。
| 確認項目 | 提案書で見る箇所・定義 | 相手に確認する質問 |
|---|---|---|
| 資料の版・時点 | 作成日、版番号、有効期限、改訂箇所 | 比較対象はどの版ですか。前の版から、金額や条件は何が変わりましたか。 |
| 計画の対象範囲 | 対象の土地・建物・工事の範囲 | この提案には、どこまでの土地・建物・工事が入っていますか。 |
| 戸数・住戸の広さ・間取り | 戸数、住戸別面積、間取りごとの戸数 | 戸数だけでなく、各部屋の広さと間取りの構成も確認できますか。 |
| 構造・工法・設備 | 計画概要、図面、仕様書、設備一覧 | 造り方や設備はどの仕様ですか。標準と追加分はどこで分かりますか |
| 指標の名前・計算式 | 「表面」「実質」「利益」等の欄と式・注記 | この書類では、その数字をどの式で計算していますか。 |
| 分子に入る収入 | 式の分子、※印の注記、収入内訳、対象期間 | どの収入の合計ですか。共益費や駐車場収入は含みますか。何年目の数字ですか。 |
| 控除と返済の扱い | 利回りの式と、収支欄の経費・返済控除 | 利回りの式ではどの経費を差し引き、収支欄では経費と借入金返済をどこに反映していますか。 |
| 分母に入る費用 | 式の分母と対応する費用の内訳 | 何を合計した金額で割っていますか。ひとまとめにされた費用の内訳も確認できますか。 |
| 総額・税込/税別 | 工事費、設計費、値引き、消費税、総額 | 消費税を含む金額はどの欄ですか。内訳の各欄は税込みですか、税別ですか。 |
| 含まれる工事・別途費用 | 「含む」「別途」等の注記と対象工事の区切り | 解体、外構、杭工事などはどこまで含みますか。追加費用が生じる条件は何ですか。 |
| 概算・予算・空欄 | 金額欄、備考、未定・概算の注記 | 予算・概算の項目はどれですか。空欄に「含む」の注記はありますか。ない場合の扱いと、金額が決まる時期を教えてください。 |
| 面積と単価の分母 | 建築面積・延床面積・施工面積等の名称、㎡/坪、単価の式 | どの面積で割った単価ですか。その面積に含む部分も確認できますか。 |
| 自己資金・借入条件 | 自己資金、借入額、金利、返済期間・方法 | いくらを自己資金とし、どの借入条件で計算していますか。想定と確定を分けて教えてください。 |
| 収入・支出の見込み | 家賃・入居率の想定、年ごとの収支、修繕費 | 家賃や入居率はどう想定していますか。修繕費は何年目に、いくら見込んでいますか。 |
一般的な確認項目として、住宅金融支援機構の資料も、家賃・入居率の見込み、修繕費の計上、借入条件に応じた返済額など、収支計画の前提を確認するよう案内しています。
住宅金融支援機構「長期安定経営のために知っておきたい4つのポイント」7ページ(2021年2月作成/確認日:2026年9月8日)。ここでは確認項目のみを参照し、掲載されている金利・費用例や統計を現在の条件には用いていません。
次の打合せは、気になる数字を一つ選ぶところから
私なら、表を一度に埋めようとせず、まず気になる数字を一つ選びます。次の打合せで、その数字について聞くなら、この三つから始めたいと思います。
1.この数字は、どの計算式で出していますか。
2.含めている費用と、含めていない費用を教えてください。
3.私が伝えた希望条件はどこに反映され、提案独自の条件はどこにありますか。
回答をもらったら、提案書のページ・欄と、確認した日を添えて残しておきたいと思います。書類に書かれていることと、担当者から聞いた説明を分けておけば、次の版を受け取ったときにも確かめ直せます。
同じ前提で比べられる数字もあれば、条件の違いを添えて読む数字もある。不明なものは、判断を保留する。私はそう分けて、式や期間、費用の範囲が対応しているかを確かめてから、金額や率を比べたいと思います。
私も、最初からこうした確認ができたわけではありません。何を聞けばよいか分からず、比較の仕方を相談するところから進んできました。
親の土地について判断するために、手元の数字を一つ、自分で説明できるところまで確かめておきたい。
利回りの式を確かめた先には、家賃や修繕費をどう見込むかという問いもあります。数字を一つ理解できるようになったら、次は、その数字を支える条件を確かめたい。私も、そんなふうに一つずつ考えていこうと思っています。
