家賃は入るのに、お金が残らない?親の賃貸経営の収支を確かめる

家賃の振込額とお金の流れを確認するための、送金明細・通帳・電卓のイラスト

親のアパートには家賃が入っている。でも、管理会社から振り込まれた額や、通帳に残っている額を見ると、どうつながっているのか分からない。親の賃貸経営に関わり始めると、そんな疑問を持つことがあるかもしれません。

家賃の額、費用を引いたあとの振込額、返済後に口座に残るお金は、それぞれ違います。税金の申告に使う「所得」も、通帳の残高と同じ数字ではありません。

この記事では、一つの物件・一か月分の送金明細と通帳から、お金の動きをたどります。読み終えたら、分からない数字について「誰に何を聞くか」を一つ決められるところを目指します。

私は、親の賃貸物件の管理の実態を知るために面談を申し込み、事前に頼んだ契約書などのコピーを受け取りました。ここからの数字は、その物件の実績ではなく、仕組みを考えるための架空例です。

目次

家賃10万円と、振込9万円はどうつながる?

まずは、ある一か月を追ってみます。一つの物件の家賃が管理会社に入り、費用を引いた残りが所有者の口座へ送られる例です。

この例では、その月の家賃の回収・送金・返済・別払い費用の支払いが、すべて同じ月に済んだとします。所有者側で使う口座は一つで、ほかの入出金はありません。金額は説明用で、家賃相場や標準的な利益を示すものではありません。

  1. 管理会社が受け取った家賃は10万円。
  2. 管理会社が費用1万円を引き、所有者の口座へ9万円を送金。
  3. その口座から借入返済6万円と、別払いの費用1万円を支払う。
  4. この月に口座が増えた額は、2万円。

家賃は10万円でも、振込は9万円。そのあとにも支払いがあるので、口座の増加は2万円になります。途中のどこを見ているかで、数字が変わるわけです。

最初に手元で確かめるのは、管理会社の送金明細です。「家賃などの入金」「差し引いた費用」「送金額」に当たる欄を探します。書類によって欄の名前は違いますが、いくら集まり、何を引いて、いくら送ったのかを追う点は同じです。

9万円の振込だけを見て「家賃は9万円」と書くと、管理会社が先に引いた1万円が見えなくなります。反対に、9万円から同じ1万円をもう一度引くと、費用を二重に数えることになります。

その振込は、何月分の家賃だろう?

送金額が分かったら、通帳で同じ金額の入金を探します。ここで、金額と一緒に見たいのが日付です。

先ほどの例は、同じ月に全部済んだという前提でした。実際には、家賃の対象月と、口座に振り込まれた月が違うことがあります。前月分などが含まれていれば、「今月入った額」をそのまま「今月分の家賃」とはできません。

今回読み直した管理の報告書にも、家賃の対象月、報告期間、振込日が別々に書かれていました。これは今回の資料確認で分かったことです。

私なら、送金明細と通帳を並べ、次の三つを見ます。

  • 明細の物件名と、振込先の口座は合っているか。
  • 明細にある家賃は、何月分を含んでいるか。
  • 送金日・送金額に対応する入金が、通帳にあるか。

どの物件の資料か、誰の名義かというところで迷う場合は、「親の土地・賃貸物件・借入を整理する|まず一枚の表にまとめよう」で、書類と物件を対応させる方法を確認できます。

対応する入金が見つからないときは、明細を示して「この送金は、どの口座の何日の入金ですか」と管理窓口へ聞く。差がある段階で、相手の誤りや不正と決めず、まず数字のつながりを確かめます。

9万円が入ったあと、何に払ったかを見る

送金が確認できたら、次は口座から出たお金です。架空例では、返済6万円と、管理会社を通さずに払った費用1万円がありました。

振込9万円 − 返済6万円 − 別払い費用1万円 = 口座の増加2万円

ここには、送金前に引かれた費用1万円を入れません。それは、家賃10万円が振込9万円になるまでに差し引かれています。

費用を確かめるときは、請求書の金額だけで終わらず、「いつ、どこから払ったか」も追います。送金明細で差し引かれたのか、この口座から支払ったのか、別の口座や現金で払ったのか。請求書・領収書と、通帳の出金日・支払先を見比べます。

別の口座から払ったものは、今見ている口座の計算から引きません。ただ、物件全体の負担から漏れないよう、支払元を添えて残しておきます。

返済も、予定表に6万円とあるだけでは、実際に引き落とされたかは分かりません。返済予定表の対象月と、通帳の引落日・金額を並べて確かめます。

これで、お金がどこへ動いたかを追えます。では、支払った額を全部「経費」とすれば、申告書の数字とも一致するのでしょうか。

返済6万円は、申告書でも経費6万円?

同じ6万円の返済でも、中身を分けると見方が変わります。架空例の返済は、借りたお金を返す部分が5万円、利息が1万円だったとします。

口座から出るのは、合わせて6万円です。一方、税務では、元本と呼ばれる「借りたお金そのもの」の返済5万円は必要経費になりません。賃貸している建物等を取得するための借入利息は、必要経費として扱われます。国税庁の「令和7年分 収支内訳書(不動産所得用)の書き方」2ページにも、この区別が示されています。

つまり、6万円出ていったから、経費も6万円というわけではありません。

逆の違いもあります。建物などを取得した費用を、一定の方法で各年の経費に分ける「減価償却費」です。申告書に減価償却費が載っていても、その分を今月また口座から支払ったわけではありません。口座の計算から、もう一度引くものではないのです。詳しくは国税庁の「No.2100 減価償却のあらまし」で確認できます。

国税庁の「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」は、不動産所得を「総収入金額から必要経費を引いた額」と説明しています。これは、通帳の入金から出金を引く計算とは分けて考えます。

手元では、返済資料の「元本・利息」の欄と、申告に使った収支内訳書や青色申告決算書の「借入金利子・減価償却費」の欄を見ます。一か月の通帳と一年分の申告資料を直接比べず、まず対象の年や期間を確かめます。

税金、修繕の支払い、将来のために移した積立金、家計への引出しも、出金しただけで一律に必要経費になるものではありません。扱いが分からない支払いは、資料を持って「これは何の費用として、いつの申告に入っていますか」と税理士へ聞く項目です。

月初と月末の残高まで、つながるだろうか

ここまで追えたら、通帳の月初と月末を見ます。先ほどの例で、月末残高が2万円になるとは限りません。2万円は、もともとあった残高から増えた額です。

月初残高 + 実際の入金 − 実際の出金 = 月末残高

架空例なら、「月初残高+9万円−6万円−1万円」が月末残高になります。まずは、その月の最初の取引前の残高から、最後の取引後の残高までをつないでみます。

実際の口座に、ほかの物件や家計のお金の出入りもあれば、それらも含めなければ残高は合いません。口座にあるすべての入出金をたどり、そのうち何が対象物件のものかを別に書き分けます。

入金が家賃とは限らない点にも気を付けます。借入金の入金、所有者が補ったお金、敷金などは、家賃と別に名前を付けておきます。敷金は返す必要があるかどうかなどで税務上の扱いが変わるため、契約と精算の内容を確認します。

出金にも、別口座への移動や家計へ回したお金があります。複数の口座をまとめて見る場合は、口座間の移動を新しい収入や費用として二重に数えないよう、移動元と移動先を対応させます。

月初と月末がつながっても、それで一年の収益や資金の余裕が分かるわけではありません。税金や保険料など支払いの大きい月もあるため、一か月を単純に12倍せず、次はほかの月も見ていきます。

今回の2万円も、全部使ってよいという意味ではありません。「残ったお金のうち、何に備えておくか」が気になったら、「『手元剰余金』は自由に使えるお金?賃貸経営で残るお金を6つに分けて考える」へ。こちらは事業計画書の残額を題材に、使い道を分けて考える記事です。

分からない数字を、次の質問に変える

下の表は、ここまで見てきたことを自分の資料に当てはめるための記入例です。私の収支を転記したものではありません。上の架空例の数字に加え、資料がそろわない場合の書き方も示しています。

まず、気になる行を一つ選び、3列目に「送金額は分かった。何月分かは未確認」のように書きます。資料がなければ「未取得」、判断できなければ「未確認」で構いません。分からない金額を0円にせず、最後の列に聞く相手と質問を残します。

スクロールできます
一か月のお金の動きと、次に聞くことを整理する表(一般的な記入例)
何のお金?見比べる資料分かったこと・まだ不明なこと混同しやすい点次に聞く相手・質問
家賃と送金額送金明細の対象月・送金欄と、通帳の入金欄例:家賃10万円、送金9万円。通帳の対応する入金は未確認。家賃の対象月と、実際の入金日。管理窓口へ:どの口座の何日の入金ですか?
送金前に引かれた費用送金明細の控除欄と、費用の内訳・領収書例:1万円差引済み。内訳の資料は未取得。送金額から同じ費用をもう一度引くこと。管理窓口へ:何の費用で、内訳はどの資料にありますか?
別に払った費用請求書・領収書と、通帳の出金欄例:別払い1万円。別口座・現金の支払いは未確認。請求と支払済み。どの口座から払ったか。支払担当・請求元へ:いつ、どこから払いましたか?
借入返済返済資料の対象月・元本・利息と、通帳の引落欄例:引落6万円。元本5万円・利息1万円と内訳確認。予定と実際の引落。返済総額と必要経費。借入先へ:この引落の内訳はどの資料で確認できますか?
税務上の所得・減価償却同じ年の帳簿、収支内訳書・青色申告決算書、償却明細例:申告資料はあるが、各欄の金額の根拠は未確認。一年の所得と一か月の口座増減。償却費と出金。税理士へ:この数字はどの資料から計算されていますか?
家賃以外の入出金通帳と、預り金・借入・口座振替などの記録例:入金はあるが、家賃か預り金か未確認。入金をすべて家賃、出金をすべて費用とすること。管理窓口・入出金の担当へ:何のお金ですか? 税務処理は税理士へ。
月初と月末の口座残高同じ口座の一か月分の通帳・取引明細例:増減は2万円。全入出金との一致は確認中。口座の増加額と残高。対象物件と口座全体。口座管理者へ:この行に対応する明細はどれですか?

表を全部埋める必要はありません。私なら、まず送金明細を一枚開き、そこにある送金額を通帳で探します。見つからなければ、その明細を示して管理窓口へ聞く。そこから始めます。

家賃から振込へ、振込から支払いへ。一つつながると、次に見る場所も分かってきます。まずは一か月分で、分かった数字と、まだ聞きたい数字を残しておきたいと思います。

税務情報の確認日:2026年9月24日。個別の申告上の扱いは、対象資料を持って税理士等へ確認してください。

この記事を書いた人

つぐサクのアバター つぐサク 親の土地を継ぐ50代

親の土地や賃貸物件を引き継ぐ立場になり、土地活用・建築・融資・相続・賃貸経営を一つずつ学んでいます。最初は「何が分からないのか分からない」状態でした。専門家ではなく当事者として、一次資料と公式情報を確認し、迷ったことや後から分かったことも含めて記録しています。

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